批判投稿が逆手に:米政府のAnthropic制裁に法的不備の指摘
2026年3月31日 (火)
- •政権によるSNSでの攻撃的な投稿が、国家安全保障制裁の取り消しを求めるAnthropic側の有利な証拠になる可能性。
- •Anthropicは、国防総省による「供給網リスク」指定と政府全般での使用禁止に対し、二つの訴訟を提起した。
- •専門家は、政府が国内企業をブラックリストに登録する際に必要な法定の排除手続きを怠ったと主張している。
米政府とAI開発大手のAnthropicとの法的対立が、同社を「サプライチェーン・リスク」に指定した行政判断を巡って激化している。この指定は本来、国防総省(DoD)の契約から特定の団体を排除するために用いられるものだが、AIモデル「Claude」の運用境界を巡る交渉が決裂した直後に発動された。政府側は国家安全保障上の懸念を理由に挙げているが、高官らがSNS上で同社を「信頼できない」と公然と批判したことが、皮肉にもAnthropic側に法的な優位性を与えてしまった形だ。
法律専門家は、X(旧Twitter)などのプラットフォームで不満を公にぶちまけたことにより、政府が国家安全保障上の機密を保持する特権を自ら放棄した可能性があると指摘する。通常、裁判所は機微な安全保障判断において国防総省に対し大きな裁量を認めるが、禁止の根拠が機密文書ではなくSNS上の誹謗中傷を通じて示された場合、その裁量は失われやすい。また、政府は国内企業をブラックリストに登録する際に義務付けられている、連邦法第41編の排除手続きをバイパスしたようにも見受けられる。
現在、訴訟はカリフォルニア州北部地区とDC回路の2つの裁判所に分かれて進行しており、本来は外国の敵対勢力に適用される「合衆国法典第10編3252条」を、米国内の主要AI研究所に適用することの限界を問うものとなっている。もしAnthropicが暫定差し止め命令を獲得すれば、政府による国内AIプロバイダーの規制の在り方に大きな先例を作るだけでなく、安全保障を理由に適正手続きを回避する動きに歯止めをかけることになるだろう。