理研、144量子ビットの国産量子コンピュータ「叡-Ⅱ」を稼働
- •理研と大阪大学が144量子ビットの新型量子コンピュータ「叡-Ⅱ」を公開
- •従来機から2倍以上の拡張を果たし、古典コンピュータによる再現の限界を突破
- •2台体制による安定したクラウド運用を実現し、実用的な量子計算環境を提供
理化学研究所(理研)と大阪大学の研究グループは、144個の量子ビットを搭載した最新の国産量子コンピュータ「叡-Ⅱ(エイツー)」のクラウドサービス運用を開始したと発表しました。これは2023年に稼働を開始した初号機「叡」の64量子ビットというスペックを2倍以上に更新する大幅なアップグレードであり、日本国内の量子計算環境において非常に重要な転換点となります。量子ビット数が増えるほど計算能力は指数関数的に向上するため、144量子ビットという規模は、従来の古典的なコンピュータ(私たちが普段使うPCやスーパーコンピュータ)では完全なシミュレーションが極めて困難な領域に達しています。
今回の技術的ブレイクスルーの鍵は、ハードウェアの密度と安定性の両立にあります。12列×12列の2次元格子状に並べられた「超伝導量子チップ」は、28mm四方という小型サイズながら、配線の効率化とマイクロ波制御装置の改良により、情報の保持期間である「量子ビット寿命」を従来よりも大幅に延ばすことに成功しました。また、共振周波数を低減させることで計算中に発生するエラー率を抑えるなど、実用性を重視した設計が随所に見られます。驚くべきことに、これらの高度な冷却システムを含む装置全体は、従来機とほぼ変わらないコンパクトなサイズに収められています。
さらに、運用面でのメリットも無視できません。これまで量子コンピュータは実験やメンテナンスのためにサービスを停止せざるを得ない場面がありましたが、初号機「叡」と新型機「叡-Ⅱ」の2台体制が確立されたことで、より安定したクラウド提供が可能となりました。利用者は、量子計算と古典計算を組み合わせるハイブリッド環境において、理研が提供するシミュレータ「Qulacs」などと連携させながら、より複雑なアルゴリズムの研究に没頭できるようになります。
この「叡-Ⅱ」の登場は、単なるスペック競争ではなく、計算ミスを自ら修正できる「誤り耐性量子コンピュータ(FTQC)」の実現という遠大な目標に向けた着実な一歩です。将来的には、新素材の開発や複雑な物流の最適化、さらには現在のAIの限界を突破する次世代の学習アルゴリズムの実行基盤として、この国産量子技術が世界をリードしていくことが期待されています。