MIT准教授、AIで新材料開発を加速
2026年2月12日 (木)
- •MITのラファエル・ゴメス=ボンバレッリ准教授が、AIと物理シミュレーションを融合させ、未知の新材料を探索している。
- •言語データと物理構造を統合した新たな「科学的汎用知能」モデルにより、化学合成や物性予測の精度が飛躍的に向上した。
- •デジタル空間での高速テストにより、次世代バッテリーや持続可能なプラスチックの迅速な開発が可能になっている。
マサチューセッツ工科大学(MIT)で新たに終身在職権(テニュア)を取得したラファエル・ゴメス=ボンバレッリ(Rafael Gómez-Bombarelli)准教授は、「科学的汎用知能」という新たなパラダイムを牽引している。彼の研究チームは、従来の物理学に基づくシミュレーションと最新の生成AIを組み合わせることで、手作業による実験の物理的な限界を打ち破ろうとしている。この手法では、数十万件ものデジタル実験を同時に実行する「ハイスループット・シミュレーション」が可能となり、高度なバッテリーから有機LEDに至るまで、あらゆる分野で有望な分子を瞬時に特定できるのだ。
現在、この分野は第2の重要な変曲点を迎えている。2015年頃の第1波がコンピュータに化学構造を認識させることに主眼を置いていたのに対し、現在は多様なデータ形式を扱うマルチモーダルなAIの時代へと進化した。これにより、モデルは自然言語で書かれた論文、3Dの材料構造、そして複雑な合成レシピを同時に理解し、推論することが可能になった。この能力は、人間の思考プロセスを模倣しながらも、圧倒的に大規模なスケールで「科学的に思考する」という包括的なアプローチを実現している。
ゴメス=ボンバレッリ氏が新たに立ち上げた「Lila Sciences」は、科学分野に特化した超知能プラットフォームの構築を目指している。これは、AIを単なる補助ツールから科学的発見の核心的な駆動力へと進化させるという、業界全体の大きなトレンドを反映したものだ。物理シミュレーションが高品質なデータを生成してAIを訓練し、そのAIがさらに優れた実験を導き出すという「正の循環」を生み出すことで、新材料がコンセプトから実用化に至るまでの時間は劇的に短縮されるだろう。