AIががんの進化と治療耐性を予測
2026年3月10日 (火)
- •MITの研究チームが、がんの治療耐性を引き起こす分子メカニズムを解読するAIモデルを開発した。
- •悪性度の高いがんの約25%に存在する「染色体外DNA(ecDNA)」に焦点を当てた研究が進んでいる。
- •シングルセル系統追跡技術により、腫瘍の成長過程における攻撃的な変異の発生源を特定することに成功した。
がん細胞は静止した存在ではなく、治療を生き延びるためにダーウィン的な進化を遂げる生物のような特性を持つ。MIT(マサチューセッツ工科大学)の助教であるマシュー・ジョーンズ(Matthew Jones)氏が率いる研究チームは、このがんの進行を「高度なチェス」になぞらえ、機械学習を活用して腫瘍の内部論理を解読するプロジェクトを推進中だ。特に、がんが医療的介入を回避するために、遺伝子やエピジェネティックな構造をどのように変化させるかの解明に力を注いでいる。
研究の大きな柱となっているのが、染色体外DNA(ecDNA)の分析である。これは細胞核内の通常の染色体構造の外側に存在する環状のDNA粒子を指す。かつては稀な現象と考えられていたが、最新のシーケンシング技術により、脳腫瘍や肺がんを含む攻撃的ながんの約25%でecDNAが確認された。これらの粒子は、従来想定されていたよりも遥かに速いスピードでがんを適応・変異させ、腫瘍が生存するための生物学的ルールを事実上書き換えてしまう存在だ。
この複雑な進化プロセスを解明するため、研究室ではシングルセル系統追跡という技術を採用している。この技術は細胞の系譜を遡ることを可能にし、攻撃的な変異がどの瞬間に発生したかを正確に突き止める。こうした細胞の履歴を予測コンピューターモデルに統合することで、腫瘍の「次の一手」を先読みする個別化医療の実現が期待されている。その結果、新たな治療標的の特定や、患者の長期生存率の劇的な向上が見込まれている。