AIが脳幹の神経路を解読。難病治療に光
2026年2月11日 (水)
- •MITの研究チームが、MRIから脳幹の重要な神経束をマッピングするAIツール「BSBT」を開発した。
- •BSBTアルゴリズムにより、パーキンソン病やアルツハイマー病などの構造的バイオマーカーの特定が可能になった。
- •昏睡状態にある患者の7ヶ月間にわたる神経の回復過程を追跡することに成功した。
ヒトの脳幹マッピングは、その小ささと呼吸や心拍による絶え間ない物理的振動のため、医療画像診断において長らく「ブラックボックス」とされてきた。こうした課題に対し、MIT、ハーバード大学、マサチューセッツ総合病院(MGH)の共同チームは、8つの主要な神経線維束を自動的にセグメント化するAIソフトウェア「BrainStem Bundle Tool (BSBT)」を開発した。このツールは、視覚野の仕組みを模した畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を活用して拡散MRIスキャンを処理し、神経線維に沿った水の動きを追跡することで、極めて高精度な神経接続マップを生成する。
この精緻な技術により、臨床医は脳の通信ケーブルとしての役割を果たす「白質」が、神経変性疾患によってどのように劣化していくかを克明に観察できるようになった。特にパーキンソン病や多発性硬化症の患者において、BSBTは従来の診断では捉えられなかった体積の減少や構造的変化を特定することに成功している。研究を主導したマーク・オルチャニ(Mark Olchanyi)氏(MITの研究員)は、これまで見えなかった脳幹の深部構造を可視化することの重要性を強調した。
さらに、このツールは診断だけでなく、予後の予測においても大きな希望をもたらしている。実際に、外傷性脳損傷によって7ヶ月間昏睡状態にあった患者の神経束が、時間の経過とともに物理的に移動し回復していく過程を追跡することに成功した。MITの教授であり麻酔科医でもあるエメリー・ブラウン(Emery N. Brown)氏ら研究チームは、このツールを公開することで、睡眠障害から麻痺に至るまで、脳幹に関連するあらゆる疾患の治療を支える「読み取り可能な地図」として活用されることを目指している。