KAIST、ほぼ完璧な分子生成AIを実現
2026年2月26日 (木)
- •KAIST AIが、ほぼ完璧な分子グラフの妥当性を実現する階層型拡散モデル「MolHIT」を発表した。
- •化学的な事前知識とデカップリングされた原子エンコーディングを活用し、既存のベースラインを大幅に凌駕した。
- •創薬分野の標準指標であるMOSES datasetにおいて、世界最高水準(SOTA)の記録を更新した。
分子設計は、AIを活用した創薬における長年の「聖杯」とされてきた。しかし、分子の複雑な2次元構造をコンピューター上で再現しようとすると、現実には存在し得ない不適切な分子が生成されることが大きな課題となっていた。従来の生成手法では、化学の基本原則を維持しながら新しい構造を探索することは極めて困難だったからである。
この課題を解決するため、KAIST AIの研究チームはHierarchical Discrete Diffusionを用いるフレームワーク「MolHIT」を公開した。このシステムは、分子を無作為に生成するのではなく、情報を階層(レイヤー)状に整理して処理する。最終的な構造を決定する前に、各原子や化学結合の根本的な役割をAIに深く理解させることで、生成される分子グラフが化学の法則に厳格に従うことを可能にした。
その成果は極めて画期的だ。業界標準のMOSES datasetにおいて、グラフベースの拡散モデルではこれまで不可能と考えられていた「ほぼ完璧な妥当性」を達成したのである。特に、原子を化学的役割に基づいて分類する手法により、複数の特性を指定した合成や分子骨格の拡張といった複雑なタスクを、かつてない精度で実行できるようになった。
研究者にとって、今回の進展は「プログラマブルな医療」への大きな飛躍を意味する。生成された分子が最初から化学的に正しいことが担保されるため、コストのかかる膨大な試行錯誤を省略できるからだ。これにより、デジタル設計からラボでの実用化に至るまでのプロセスが、劇的に加速されることが期待されている。