イーライリリー、創薬AIスパコン「LillyPod」を稼働
2026年2月27日 (金)
- •1,016基のNVIDIA Blackwell Ultra GPUを搭載した、世界初のDGX SuperPODが誕生
- •9,000ペタフロップスの演算能力により、タンパク質拡散モデルやゲノミクス基盤モデルを加速
- •数十億の分子をデジタル上でシミュレーションする「ドライラボ」により、物理的な実験の制約を打破
米製薬大手のイーライリリー(Eli Lilly)が、創薬プロセスに革命をもたらす巨大AIファクトリー「LillyPod」を正式に稼働させた。わずか4ヶ月で構築されたこの演算基盤には、1,000基を超えるNVIDIA Blackwell Ultra GPUが投入されており、700テラバイトもの膨大なゲノムデータを処理する圧倒的なパワーを備えている。これにより、従来の物理的な実験から大規模なデジタルシミュレーションへと舵を切り、研究開発における「物理的な限界」の突破を目指す。
このシステムは単なる処理速度の向上にとどまらず、高度なAIアーキテクチャをトレーニングするための精密な装置としての側面も持つ。同社は、新たな生物学的構造を設計するタンパク質拡散モデルや、低分子創薬に特化したグラフニューラルネットワークの構築にこのクラスターを活用する計画だ。これにより科学者たちは、試験管に触れる前に数十億もの分子仮説を仮想空間で検証できるようになり、初期段階の研究にかかる時間とコストを大幅に削減することが可能となる。
さらに、イーライリリーはこれらの成果を広く共有するため、提携パートナーが独自の創薬モデルを利用できるプラットフォーム「TuneLab」を立ち上げる。ここでは連合学習と呼ばれるプライバシー保護技術が採用されており、各企業は機密データを共有することなくモデルの学習に貢献できる仕組みだ。NVIDIAのBioNeMoやFLAREフレームワークに支えられたこの協調的なアプローチは、世界の健康課題を解決するための、相互接続されたAI主導のエコシステムの到来を予感させる。