自律走行し、物を掴む「分離型ロボットハンド」が登場
2026年2月10日 (火)
- •遺伝的アルゴリズムを用いて、歩行と把握の両方に適した動きを最適化した。
- •アームから分離して独立走行が可能。配管内などの狭所にも進入できる。
- •指が双方向に曲がる設計により、手のひらの表裏両面で物体を保持できる。
スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の研究チームは、マニピュレーターとしての機能と自律走行能力を兼ね備えた、画期的なロボットハンドを発表した。このシステムは、人間の解剖学的構造に縛られない柔軟な設計が特徴であり、指が前後双方向に曲がることで、手のひらのどちら側でも同時に物体を掴むことが可能だ。この双方向の柔軟性により、例えば「ボトルを固定しながらキャップを外す」といった、人間の手では不可能な複雑なタスクを単独でこなすことができる。
この独自の形状を実現するために、研究チームは生物の進化を模倣して最適な設計を見つけ出す機械学習手法である「遺伝的アルゴリズム」を採用した。仮想環境で数千通りの組み合わせをテストした結果、移動能力と把握力のバランスが最も優れた設計図が導き出された。完成した5本指および6本指のプロトタイプは、指先を足のように使って地表を這うように移動し、重い荷物を運ぶ際や凹凸のある地形でも高い安定性を維持する。
最大の特徴は、ロボットアームから切り離され、工業用パイプや災害現場などの閉鎖空間で単独で作業を行い、再びベースへと戻る能力だ。現在は倉庫の物流やインフラ点検への応用が期待されているが、筆頭研究者のオーデ・ビラール(Aude Billard)教授は、こうした非人間型のデザインが将来的に義肢技術を再定義する可能性を示唆している。ただし、人間の脳が生物学的な構造と異なる肢体をどのように制御するかという課題は、今後の身体化AI分野における重要なステップとなるだろう。