AIがマッコウクジラの「母音」を解読
2026年1月25日 (日)
- •AI解析によりマッコウクジラの音声から「母音」に似た構造を持つ『クラック音』を特定した。
- •生成モデルを活用し、海洋録音データに含まれる意味のある音の変化をシミュレーション・判別した。
- •一方で、観測されたパターンは録音時のノイズや生理的反応に過ぎないという批判も出ている。
Project CETIとカリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)の研究チームは、最先端のAIを駆使して深海の謎めいた言語の解読に挑んでいる。チームはマッコウクジラが社会的な個体識別に用いるリズム音「コーダ」に対し、ディープラーニングを適用。その結果、人間の母音に相当するような微細な音の変化を特定することに成功したのだ。 学術誌『Open Mind』に詳述されたこの発見は、クジラのコミュニケーションがこれまで人類が考えていた以上に複雑な構造を持つ可能性を示唆している。今回の突破口となったのは、2つのニューラルネットワークを競わせる「敵対的生成ネットワーク」という特殊なフレームワークだ。片方が本物の生体信号を学習し、もう片方がそれを模倣した合成データを生成することで、解析の精度を飛躍的に高めている。 研究チームは合成されたクジラの音を操作することで、通常のクリック音とは異なる特定の「クラック音」を突き止めた。さらに、クリック間の無音部分を取り除くことで、AIが重要だとフラグを立てた音のパターンが人間の耳でも識別可能であることを証明した。しかし、この知見は海洋生物学界で激しい論争を巻き起こしている。 懐疑的な専門家は、観測されたパターンは水中機材による録音ノイズ(アーティファクト)か、あるいは単なる生理的な興奮状態を示すものであり、意図的な言語信号ではないと主張する。それでもなお、今回の研究は生成AIが自然現象を観察するための強力なレンズとなり得ることを示した。非人類のコミュニケーションを探求する新たな枠組みが提示されたと言えるだろう。