AI法務・安全ガイド:規制、著作権、そしてプライバシー保護
AIを使っている方なら、一度はこんな悩みを抱えたことがあるのではないでしょうか。
「自分がアップした文章やイラストが、AIの学習に使われているのでは?」
「AIで作った画像は、自分の著作物として認められるのだろうか?」
「個人情報が漏れていないだろうか?」
AIの発展スピードがあまりにも速く、各国の法律が追いつけていない状況ですが、2026年現在、AI関連の法律が本格的に施行され始めています。
今や私たちの生活と切り離せないAIを、トラブルなく上手に使う方法について整理してみます。
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各国はAIをどう規制しているのか?
AI規制は国によって方向性がかなり異なります。韓国とEUは規制が厳しい方で、日本は比較的オープン、アメリカは州によって差が大きいです。
| 国 | 主な法律 | ポイント |
|---|---|---|
| 日本 | AI推進法 + 著作権法第30条の4 | 日本初のAI専用法律です。EU式の厳格な規制ではなく「促進優先」のアプローチで、AI戦略本部を設置し、人権侵害企業名の公表権限を付与しています。著作権法上のデータ学習は依然として幅広く許容されていますが、著作権者の利益を不当に害する場合は除外されます。 |
| 韓国 | AI基本法 | イノベーションと安全のバランスを追求しています。高リスクAIにはリスク管理計画と説明義務が課され、違反時には最大3,000万ウォンの課徴金が科される可能性があります。 |
| EU | AI法 | 世界で最も厳しい規制です。リスクレベルに応じて段階的に規制し、違反時には**全世界売上の最大7%**の課徴金が科され、著作権者の事前同意(Opt-in)を重視しています。 |
| アメリカ | 大統領令 + 州法 | 連邦レベルの統一法はまだありませんが、カリフォルニア州・コロラド州などでAI自動意思決定に対する**消費者の選択権(Opt-out)**を保障する州法が施行中です。 |
| イギリス | TDM例外(現在は非商用のみ) | 現在は非商業的研究にのみAI学習用データの活用を許可しており、著作権者が拒否しなければ学習を許可するモデルの導入を検討中です。 |
自分のコンテンツや個人情報、AIが勝手に使っているのでは?
オンラインにアップした文章、写真、イラストなどが、知らないうちにAIの学習に使われている可能性があることをご存知でしたか?
特に、AIサービスなどに登録する際、個人情報の設定と学習への同意の有無を必ず確認してください。デフォルトが「同意」になっているケースが多くあります。
AIクローラーとは?
AI企業はクローラー(Crawler)という自動収集プログラムでウェブコンテンツを収集しています。
OpenAIのGPTBot、GoogleのGooglebotなどはサイト設定(robots.txt)を概ね尊重する傾向にありますが、一部のクローラーはこうした設定を無視して無断収集するケースもあるため、注意が必要です。
コンテンツを守る方法
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個人サイト・ブログ: robots.txtというファイルに明記することで収集を拒否できます。ただし、この場合Google検索のためのクロールにも影響する可能性がありますのでご注意ください。
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プラットフォームのAIブロック設定を活用: 一部のプラットフォームではAIクローラーをブロックする設定を提供しています。しかし、プラットフォームごとにポリシーが異なり、今後どう変わるかは予測が困難です。
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AIサービスの学習拒否(Opt-out)設定を確認: ほとんどの場合、設定メニューの奥深くにオプトアウト機能が隠れているため、登録後に必ず確認することをお勧めします。
AIで作った作品、自分の著作物として認められるのか?
この部分がクリエイターにとって最も重要な問題です。結論から言えば、「AIが単独で作ったものはダメだが、人間が十分に関与すれば可能性がある」というのが現在の流れです。
事例1:AI単独の作品には著作権が認められない
2023年のThaler v. Perlmutter事件(2025年3月控訴審確定)で、「Creativity Machine」というAIが自ら生成した絵を著作権登録しようとしましたが、却下されました。裁判所は「著作権は人間の創作活動があってはじめて認められる」という原則を改めて確認しました。

事例2:プロンプトをいくら多く使っても不十分
Allen v. Perlmutter事件(現在訴訟進行中)で、Jason AllenはMidjourneyで作成した「Théâtre D'opéra Spatial」という作品を登録しようとしました。600以上のプロンプトを使用しましたが、米国著作権局はAI が生成した部分を除外するよう要求し、Allenがこれを拒否したため登録は却下されました。現在、コロラド連邦裁判所で訴訟が進行中です。

事例3:人間が書いた部分+配置構成は認められる
2023年のZarya of the Dawn事件で、Midjourneyで作成したグラフィックノベルのAI生成画像自体には著作権が認められませんでしたが、作家が直接書いたテキストと画像の「選択と配置」は独創的な編集著作物として認められました。

事例4:インペインティング技法で十分に関与すれば可能
2025年の「A Single Piece of American Cheese」事件で、Invoke AIの創業者Kent KeirseyがAI画像の35以上の領域をインペインティング(特定の領域を指定して修正する技法)で一つずつ修正・合成しました。米国著作権局はこれがコラージュのように人間の創造的な選択と配置が十分に反映されていると判断し、著作権登録を承認しました。

クリエイターはどうすればいいのか?
1. 制作プロセスを記録する
単にプロンプトを入力しただけでなく、構図の修正・細部の調整・合成など、人間の関与プロセスを詳細に記録してください。
2. 編集著作物戦略を活用する
個々の画像の著作権が不明確であっても、複数の要素を組み合わせて新しい作品に仕上げれば、保護される可能性が高まります。
3. AIの使用を透明に開示する
著作権登録の際、AIが生成した部分を明確に区分し、人間が加えた創造的要素を強調することが有利です。
出典一覧
各国のAI関連法律
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韓国 AI基本法 — 인공지능 발전과 신뢰 기반 조성 등에 관한 법률
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EU AI Act — Regulation (EU) 2024/1689
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日本 AI推進法 — AI の活用等の推進に関する法律
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日本 著作権法 第三十条の四 — 情報解析を目的とした著作物の利用
AI生成作品に関する著作権
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Thaler v. Perlmutter, No. 22-cv-01564 (D.D.C. 2023; 항소심 확정 2025.03)
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Allen v. Perlmutter (콜로라도 연방법원, 소송 진행 중)
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Zarya of the Dawn — Registration # VAu001480196 (USCO 2023)
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A Single Piece of American Cheese — Registration # VA0002427087 (USCO 2025)
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Mata v. Avianca, No. 22-cv-01461 (S.D.N.Y. 2023)
AIを安全に使うためのチェックリスト
AIに一度学習されたデータを「なかったことにする」のは、現実的にほぼ不可能です。大切な情報を入力する前に、少し立ち止まって考える習慣をつけましょう。
また、著作権の問題であれ、業務の質の問題であれ、AIの出力をそのまま使うのではなく、人間が確認・修正するひと手間を必ず挟むようにしてください。
以下のチェックリストを日々のAI活用のお供にどうぞ。項目を一つひとつ確認するだけで、思わぬリスクをぐっと減らすことができます。